目次
介護職は、人と人とのつながりが非常に重要な職業です。しかし、その特性ゆえに人間関係の悩みも多く発生します。
特に、同僚や利用者とのコミュニケーションに問題があると、仕事のパフォーマンスや精神的な健康に影響を与えることがあります。
本記事では、介護職における人間関係の重要性、悪化の原因、そして良好な関係を築くための方法について詳しく解説します。
介護職の人間関係が重要な理由とは?
人間関係の悩み(複数回答) | |
---|---|
職場での人間関係について特に悩み、不安、不満等は感じていない | 36.30% |
悩みの相談相手がいない、相談窓口がない | 9.60% |
ケアの方法等について意見交換が不十分である | 16.50% |
部下・後輩の指導が難しい | 18.50% |
自分と合わない上司や同僚がいる | 19.30% |
上司や同僚の介護能力が低い | 9.50% |
上司や同僚との仕事上の意思疎通がうまく行かない | 13.60% |
経営層や管理職等の管理能力が低い、 業務の指示が不明確、不十分である |
17.70% |
経営層の介護の基本方針、理念が不明確である | 9.70% |
参考:公益財団法人介護労働安定センター『令和5年度 介護労働実態調査結果』
このデータは、2023年に公益財団法人介護労働安定センターが調査した、介護職における人間関係に関する悩みの調査結果です。
この結果では「職場での人間関係について特に悩み、不安、不満等は感じていない」と回答した介護職は36%となっています。つまり、約6割以上が何かしらの人間関係の悩みを抱えていることになります。
人間関係は単なる職場の雰囲気だけでなく、サービスの質や職員の定着率にも大きな影響を与えます。良好な人間関係は、チームワークを向上させ、より質の高い介護サービスの提供につながります。
逆に言えば、人間関係の悪化は様々な問題を引き起こす可能性があります。特に、介護職員はチームで業務を行うことが多いため、連携がうまくいかないと仕事の質も低下してしまいます。
介護職の離職率と人間関係は密接する
2022年の厚生労働省「雇用動向調査」によると、全産業平均の離職率は15.0%でした。これに対し、介護職の離職率は13.1%と全産業平均を下回っています。
とはいえ、高齢化社会に伴って介護職の人材不足が懸念されている現状を踏まえると、離職率の改善は今以上に重要となります。
以下の表は、公益財団法人介護労働安定センターが介護職の離職理由を調査した結果です。
退職理由(複数回答) | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|
家族の介護・看護のため | 3.40% | 4.10% | 4.90% | 5.00% | 4.50% |
結婚・妊娠・出産・育児のため | 13.30% | 20.40% | 19.90% | 8.20% | 8.40% |
病気・高齢のため | 3.00% | 3.10% | 3.10% | 3.40% | 3.10% |
定年・雇用契約の満了のため | 3.00% | 3.10% | 3.10% | 3.30% | 3.10% |
家族の転職・転勤、又は事業所の移転のため | 1.70% | 1.40% | 1.70% | 1.60% | 1.70% |
法人や施設・事業所の理念や 運営のあり方に不満があったため |
8.60% | 8.80% | 8.20% | 8.30% | 7.80% |
職場の人間関係に問題があったため | 23.20% | 34.30% | 26.80% | 26.30% | 19.90% |
自分に向かない仕事だったため | 6.60% | 6.80% | 6.70% | 7.10% | 7.60% |
自分の将来の見込みが立たなかったため | 16.20% | 16.40% | 16.50% | 15.80% | 13.20% |
収入が少なかったため | 16.60% | 16.00% | 16.40% | 16.60% | 16.00% |
新しい資格を取ったから | 7.60% | 9.80% | 7.70% | 7.60% | 5.90% |
他に良い仕事・職場があったため | 19.90% | 17.00% | 16.90% | 19.00% | 16.00% |
人員整理・勧奨退職・法人解散・事業不振等のため | 9.70% | 9.60% | 9.80% | 9.90% | 7.60% |
参考:公益財団法人介護労働安定センター『令和5年度 介護労働実態調査結果』
この調査結果では、人間関係が原因で退職した職員は2023年時点で約20%となっており、最も多い退職理由だとわかります。
ただし過去の数字と比べると、人間関係が原因の離職が年々下がっていることもポイントです。
このことから、介護業界全体で人間関係を問題視し、改善している傾向があることがわかります。
職場の人間関係が業務に与える影響
職場の人間関係は、日々の業務にも大きな影響を与えると言えます。考えられる影響を4つ紹介します。
- 情報共有の質:話しやすいと感じる関係性があれば、利用者に関する重要な情報共有を円滑にします。
- ケアの一貫性:チームメンバー間のコミュニケーションはサービスの一貫性につながります。利用者側は、同じ質のサービスを受けることができ、安心感を得ることができます。
- 問題解決能力:協力的な環境では、困難な状況に直面した際の問題解決がスムーズになります。特に介護職は緊急対応が求められやすい職場であり、問題解決力が重要です。
- モチベーション:良好な人間関係は、職員のモチベーション向上につながります。職場の雰囲気が良ければ、離職率の改善が可能です。
職場の人間関係は介護サービスの質に大きな影響を与えるため、人間関係の改善は施設運営において重要な課題となります。
介護職での人間関係が悪化する原因
介護職での人間関係悪化には、さまざまな原因が考えられます。
どんな原因があるのか把握することで、人間関係の悪化を予防することにも繋がります。
ここでは、職場内での人間関係が悪化する主な要因を3種類に分けて詳しく解説します。
職場のチームワークと役割分担の問題
職種・部署を超えた連携は全産業において重要視される問題と言えます。
特に介護現場では多職種連携が必要不可欠です。しかし、以下のような問題が発生することがあります。
- 役割分担の不明確さ:誰が何をすべきか役割が不明確な場合、責任の押し付け合いが起こりやすくなります。
- 業務負担の偏り:業務の分担量が不平等になると、職員間の不満が発生しやすくなります。
- 情報共有の不足:適切な情報共有がなければ、チーム内だけでなく利用者からの信頼関係も損なわれます。
これらの問題を解決するためには、明確な業務分担と定期的なミーティングや朝礼の実施が重要です。
もし既に心当たりのある方がいれば、すぐにでも注意するようにしましょう。
新人とベテランのコミュニケーション
介護現場では、経験豊富なベテラン職員と新人職員が共に働くことが多くあります。
上下関係を意識しすぎたコミュニケーションは、人間関係の悪化につながることがあります。
- 不適切な指導:ベテラン職員の指導が厳しすぎたり、逆に放任的すぎたりする場合は人間関係悪化につながります。
- 価値観の相違:介護に対する考え方や方法論の違いがあると、意見の衝突が起きる可能性があります。
- 世代の違い:身についたコミュニケーション方法は世代によって異なります。この違いが誤解を招くことも考えられます。
これらの問題を解決するためには、相互理解と尊重の姿勢が重要です。
昨今では「。」で終わる文章が威圧的に感じることから「マルハラ」という言葉が生まれるほど、世代間のコミュニケーションの常識は異なります。
新人だからといってリスペクトが足りないコミュニケーションをしてしまうと、信頼関係が無くなってしまうこともあるでしょう。
定期的な研修や交流の機会を設けることで、世代間の距離を縮めることができます。
ベテラン社員に向けて、教育方法やマネジメントの研修を実施することも効果的でしょう。
施設利用者とのミスコミュニケーション
「人間関係」と言っても、職員同士の関係だけとは限りません。
介護職員と利用者との関係も、お互いのストレスに大きな影響を与えます。
利用者との良好な関係を築くことができない場合は、職場の雰囲気にも悪影響を及ぼすことがあります。
- 利用者のニーズ理解:利用者が何を求めているのか理解できない場合、どんなサービスを提供すればいいか明確にできずにストレスとなります。
- コミュニケーション能力:認知症の方など、コミュニケーションが難しい利用者との関わり方に困難を感じる場合があります。
- 過度な感情移入:利用者との適切な距離感を保つことも重要です。淡白過ぎる対応をしたり、感情移入し過ぎることもストレスに繋がります。
これらの問題に対しては、コミュニケーション能力を上げるような社内研修をしたり、認知症分野の資格所有者を担当に当てるなど、管理者側の対応も重要となります。
介護職での良好な人間関係を築く方法
人間関係の改善は、個人の努力だけでなく、組織全体での取り組みが必要です。以下に、具体的な改善方法を紹介します。
日常のコミュニケーションを工夫する
日常のコミュニケーションは人間関係構築の基本でもあり、ビジネススキルの基礎でもあります。以下の工夫をすることで、良好な人間関係構築と、職場の雰囲気を改善できます。
- 積極的な挨拶:出勤時や退勤時の挨拶を徹底し、職場の雰囲気を明るくすることができます。
- 感謝の言葉:「ありがとう」「お疲れさま」などの言葉を積極的に使用しましょう。感謝の気持ちは職場内での信頼関係を強化します。
- 傾聴の姿勢:相手の話をしっかりと聞く姿勢を持ち、共感や相互理解を試みましょう。
- 表情や仕草:言葉だけでは説明が伝わりにくいことがあります。特に介護職では、実際にお手本を見せ合うシーンは多いです。
これらの小さな工夫の積み重ねが、良好な人間関係を築けるきっかけになります。
前向きな職場環境作りの工夫
人間関係の改善には、職場環境から変える必要があります。特に管理者は、以下のような制度を設けることが求められるでしょう。
- 定期的なミーティング:情報共有と意見交換の場を設けましょう。朝礼のような短い時間でも効果が見込めます。
- 目標設定と評価:個人やチームの目標を明確にできれば、達成感を共有することができます。
- 職場内イベント:懇親会や勉強会などの交流の機会を設けることも重要です。
- メンター制度:新人職員にベテラン職員がメンターとしてサポートする体制を整えることも有効です。
これらの取り組みにより、職場全体の雰囲気が改善され、個々の人間関係も良好になります。
サービス利用者を理解するための工夫
利用者との良好な関係も重要です。担当者だけでなく、職員複数人で利用者に関する情報共有をすることが必要です。
- ケアプランの共有:利用者一人ひとりのケアプランを職員複数人で共有し、統一したケアを提供します。
- 利用者の習慣理解:利用者の過去の生活や趣味などを知ることで、より深い理解と共感が生まれます。
- ご家族とのコミュニケーション:利用者のご家族とも良好な関係を築くことで、利用者本人の理解にも繋がります。
- 職員間ミーティング:利用者のケアについて職員間で定期的に話し合い、ベストなケア方法を模索しましょう。
当たり前ですが人には相性が存在します。職員同士で協力しながら利用者とコミュニケーションをとることで、相性によるミスコミュニケーションを減らせるでしょう。
自分だけでは利用者の理解が難しくても、職場の仲間なら理解できる可能性があります。積極的に相談することを心がけましょう。
転職をして環境を変える
これまで紹介した方法を試しても、改善が見られなかった場合は思い切って転職することも一つの選択肢となります。先述したように、人にはどうしても相性があります。
例えば、有料老人ホームなどの介護施設では、職員やご利用者様も変わることがなく、毎日特定の同じ人と関わることをストレスと感じる人もいるかもしれません。
訪問介護なら日々違う人と接することになるので、ストレスレスで働くことができる可能性があります。
人間関係の改善を試みることはもちろん重要ですが、ストレスが溜まってしまう前に転職を検討してみましょう。改めて自己分析を行い、どんな職場や職種なら自分に合っているか再確認することが大切です。
まとめ
介護職における人間関係の改善は、個人の努力と組織の取り組みの両方が必要です。
良好な人間関係は、職員のモチベーション向上と、より質の高い介護サービスの提供につながります。
日々の小さな工夫から始め、継続的に取り組むことで、働きやすい職場環境を作り上げていくことができるでしょう。
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